2018.11.20 12:37小説 雨の秋/紅葉の秋 黎夜月雨の秋/紅葉の秋 黎夜月 並木道を歩く。吹き抜ける風は冷たく、肌をなでるたびに体温を奪う。むき出しの手のひらは温度を失くして青白い。まるで死人のようだと僕は嗤った。真っ黒な服が余計に白さを際立たせている。 ひらり。一枚の紅葉が風に煽られ、目の前に落ちてきた。そっと伸ばした手の中に舞い降りた紅葉を、僕はひとり眺めていた。*「好き?」 視界の端に白が翻る。 「もみじ。好き?」追うように目線を上げると、前を歩いていた彼女が振り向いて、こちらの手の中を覗き込んでいた。眩しいほど真っ白なワンピースが、色づいた並木道の中で目を引く。 「嫌いじゃない」 僕の答えに「なぁにそれ」ところころ笑うと、また数歩先へと駆けて...
2018.11.20 12:07詩 雨の秋/紅葉の秋 黎夜月雨の秋/紅葉の秋 黎夜月空が高い 空が低い 地面が近い 地面が遠い 舞い上がっては散りゆく赤と 滴り落ちては昇りゆく青風に乗って、踊る、おどる、くるくると混ざって、離れて、染まって、染められて空を飛ぶ、空を舞う、空で出会う、空に焦がれる小さな雫と小さな木の葉どちらも最期は地に落ちて溶けて、解けて、巡りゆく命の水と命の色巡る季節の先でまた命を咲かせに、散ってゆく雨散りゆく紅葉の秋に 紅葉降りしきる雨の秋