二言語辞典に関する疑問

はじめまして。

2022年12月より部長を務めております、鱸と申します。


文芸研究同好会における執筆活動の一環としてこのブログを積極的に活用したいと考え、筆を執りました。

ご挨拶も兼ねて、今回は二言語辞典に関する疑問について書きます。


三三七拍子が四拍子であること。

その事実に違和感を覚え、私は図書館に赴きました。

まず、みんな大好き『新明解国語辞典』(第八版)を開き、「拍子」を探すことにしました。

すると「拍子」という言葉が思いのほか多様な意味を持っていると分かり、

当初ブログに書こうと思っていた「拍子」に関する疑問は解決してしまいした。

※納得はしていません。三三七拍子の呼称は「三三七拍手」に改めたいです。


意気消沈して参考図書コーナーを去ろうとした私ですが、

本棚の一角に「中日辞典」という言葉を発見し、立ち止まります。

中日ドラゴンズの選手名鑑なんて、大学図書館にあるはずがない。

訝しんで近づくと、それは中国語と日本語の二言語辞典でした。

中日・日中辞典です。


私は生まれてから現在に至るまで、

中日・日中辞典をまじまじと見る機会がありませんでした。

いつもお世話になっているのは、英和・和英辞典。

学部の講義で使ったのは、独和・和独辞典と、伊和・和伊辞典です。


お気づきのことと思います。

中日・日中辞典は、「中和・和中辞典」ではないのです。

私は以上の情報から、なにもかも分かったような気になり、

「和」は欧米諸国、「日」はアジア諸国に対して用いるのだろうと仮説を立てました。

この仮説を検証するため、他の二言語辞典の表記を調べてみました。

概ね以下のような表記が用いられているようです。


ヒンディー語:日印

韓国語:日韓

ポルトガル語:日葡、日ポ

オランダ語:日蘭、和蘭

スペイン語:和西

フランス語:和仏

ロシア語:和露

アラビア語やベンガル語、ウルドゥ語などは略称がありませんでした(素人調べ)。


仮説が正しいとすると、ポルトガル語が(オランダ語も?)例外になってしまします。

では、中国、インド、韓国、ポルトガル、オランダの共通点とはなにか。

わかりません。行き詰まりました。

外交ニュースではほとんど「日」で統一されている(日仏、日独など)一方、

辞典ではどのような基準で「和」と「日」が使い分けられているのか、不明です。


言葉を扱う辞典で日本語を「和」と表現する場合があるのは、

日本語のなかに和語、漢語、外来語などの区別が存在するためだと考えています。

これは、漢字の辞典を漢和辞典と呼ぶことからも想像がつきます。


であればいっそ、外交では「日」、言語では「和」と使い分けてしまいたいものです。

中日辞典も中和辞典も、呼称としてはどのみち紛らわしい一面を持つのですから。

と一時的に考えましたが、もし韓日辞典が韓和辞典になった場合は、

韓和辞典が漢和辞典と同音になり、こちらも紛らわしくなります。


事態をややこしくしているのは、おそらく、日本語そのものでしょう。

無謀な憶測ですが、

戦時中など、日本語=和語でなくてはならない時代に需要が高かった言語に対しては「和」を用い、

その前後、日本語で使われているすべての言葉を日本語として取り扱える時期に交流があった国の言語に対しては「日」を用いているのではないでしょうか。

そうであるとすれば、ポルトガル語とオランダ語に対して「日」を用いる理由もわかるような気がします。


インドはよくわかりません。


二言語辞典における「和」「日」の使い分けに関しまして、

ご意見のある方、有識者の方は、ぜひ文芸研究同好会までご連絡ください。

どうぞよろしくお願いいたします。


2023.01.21 鱸


追伸

三省堂国語辞典には広島東洋カープ仕様、阪神タイガース仕様、福岡ソフトバンクホークス仕様の版があります。

中日ドラゴンズ仕様の三国はまだありません。

1コメント

  • 1000 / 1000

  • heavy_rain

    2024.11.13 14:31

    鱸さん、初めまして。鱸さんはもう、卒業されてしまったのかもしれませんし、これから書く内容程度のことは既知のことかもしれません。私の考えではありませんが、中日とするのは漢和と区別するためではないかという意見があります。「中」も「漢」も中国を意味する語ですから中国語と日本語の対訳辞書として「中日」と明示的に用いたのではという考えのようです。その他の二国間の用い方についてはよくわかりません。「大獨日辭典」の著者はその名称について、”多年の通称となっていた「獨和」の「和」の一字”ですとか、”従来の因襲を破って”と記しているようです。少なくとも辞典を編纂できる、言葉に詳しそうなこの著者のコメントからは、通称とか因襲と表現していることから、明確な使い分けの理由はなさそうな感じがします。しかしまあ、よくもこんな所(日と和の使い分け)が引っかかったものですね。気にしたこともありませんでした。

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