落語『長短』の味

こんにちは。鱸です。

文芸研究同好会では、執筆活動の一環としてこのブログの記事を作成しています。


昨年度は辞書のこと、歌人のことを書きましたが、

どなたかひとりくらいは読んでくださったのでしょうか。

今回は落語のことを書きます。


落語というのは、同じ噺でも、

噺家さんによって味わいが変わります。

同じオーケストラでも指揮者が異なれば趣向が変わることと似ていると思います。


この落語の特徴を顕著に感じたのは、

古今亭菊之丞さんの『長短』を聴いたときでした。


滑稽噺『長短』の構造は単純だと考えています。

登場人物は二人だけです。

のんびり屋の長さんと、

てきぱきした短七さんです。

話は、長さんが短七さんのお家へ遊びに行き、

二人でおしゃべりをするという流れです。


噺についてはインターネットで調べれば出てきますが、

簡易的な落語辞典にはあまり載っていないイメージがあります。

でも某動画サイトには高座の映像がたくさんあるようです。


この噺に出てくる長さんと短七さんは、

正反対の性格をしていますが、仲はとても良いようです。

また、共に江戸出身と思われます。


しかし古今亭菊之丞さんの長さんは関西の方でした。

訥弁な長さんと早口な短七さん……というだけでなく、

イントネーションも演じ分けていらっしゃいました。

二人の境目がよりクリアに思えて、

感動したのを覚えています。


そしてこの噺はオチに向かう過程で、

叩いた煙草が袂に入ってしまったことに言及するまで、

長さんと短七さんの長いやりとりがあります。


古今亭菊之丞さんはその長いやりとりの前に、

さらに別のやりとりを挟んでいらっしゃいました。

※驚くので、実際に聴いてみてください。


この効果は本当にすごかったです。

すんなりとオチに向かってもいいのですが、

長さんの性格を丁寧に描くとたしかにこうなりそうだという気持ちにもなりますし、

焦れる短七さんの気持ちもよくわかります。

また、長さんの優しさと憎めなさも深まるような気がします。


気の長短をコミカルに演じてすっきり終わるのもいいと思うのですが、

二人の性格の差を終始細かく語られると、

オチの味がこんなに変わるのだ、と初めて体感しました。


この噺は、お師匠から学んだのでしょうか。

それとも独自のアレンジなのでしょうか。


古今亭菊之丞さん、古今亭圓菊さんの『長短』につきまして、

ご意見のある方、有識者の方は、ぜひ文芸研究同好会までご連絡ください。

どうぞよろしくお願いいたします。


2023.05.21 鱸


追伸

寄席はほとんど年中無休です。

いつ入って、いつ出てもいいです。

ご飯を食べてもいいです。

なにを着て行ってもいいです。

昼夜の入替がない寄席なら、一日中居てもいいです。

噺家さんがその日のお客さんの様子を見て選んだ噺を、

その日のお客さんのために話してくれます。

本当に楽しい場所です。

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