2018.11.20 12:45小説 仰望の秋 市古輪 「あー、あー。もしもし、聞こえる? こちら都会の者。もしもーし」 ヅヅッ ザー、ザー… 「あっ、繋がった。こちら田舎もん。聞こえてる」 「よかった。これからがピークだっていうのに、もう寝ちゃったのかと思った」 「絶対寝るなって、言ったのはそっちだろ」 「まあ。でも、これだけ2人の居る距離が離れていたら、走って行って叩き起こすこともできないし」 ザザー、ザ 「21時36分。そろそろピークだ」 「マジ? 周りが明るくて全く見えない」 「どこにいるんだ?」 「6階建てアパートの屋上」 「6階もあるのに、周りのほうが明るいのか」 「近くにス...
2018.11.20 12:37小説 雨の秋/紅葉の秋 黎夜月雨の秋/紅葉の秋 黎夜月 並木道を歩く。吹き抜ける風は冷たく、肌をなでるたびに体温を奪う。むき出しの手のひらは温度を失くして青白い。まるで死人のようだと僕は嗤った。真っ黒な服が余計に白さを際立たせている。 ひらり。一枚の紅葉が風に煽られ、目の前に落ちてきた。そっと伸ばした手の中に舞い降りた紅葉を、僕はひとり眺めていた。*「好き?」 視界の端に白が翻る。 「もみじ。好き?」追うように目線を上げると、前を歩いていた彼女が振り向いて、こちらの手の中を覗き込んでいた。眩しいほど真っ白なワンピースが、色づいた並木道の中で目を引く。 「嫌いじゃない」 僕の答えに「なぁにそれ」ところころ笑うと、また数歩先へと駆けて...
2018.11.20 12:07詩 雨の秋/紅葉の秋 黎夜月雨の秋/紅葉の秋 黎夜月空が高い 空が低い 地面が近い 地面が遠い 舞い上がっては散りゆく赤と 滴り落ちては昇りゆく青風に乗って、踊る、おどる、くるくると混ざって、離れて、染まって、染められて空を飛ぶ、空を舞う、空で出会う、空に焦がれる小さな雫と小さな木の葉どちらも最期は地に落ちて溶けて、解けて、巡りゆく命の水と命の色巡る季節の先でまた命を咲かせに、散ってゆく雨散りゆく紅葉の秋に 紅葉降りしきる雨の秋
2018.11.20 01:53詩 仰望の秋 市古輪はじめまして!部員の市古輪です。学祭で展示したものをブログで載せてもいいよ~と部長がおっしゃるので、載せちゃいます。(ちなみに、あの展示物は全て完全新作です。展示が終わったら部員に返却されるか処分されてしまうので、こうやって公表しない限りはその場限りの短い命です)
2018.11.05 14:20檸檬色の独り言こんにちは。部長……ではありません。本日は「前」部長がお送り致します。趣味は節約と睡眠と美術館巡り、好きな作品は長野まゆみ作品とリン・フルエリンのナイトランナーシリーズ、好きな四字熟語は合縁奇縁です。どうぞよしなに。とは言っても、同好会のブログは初めてなので、何から書けばいいのやら。ひとまず、まったり高村光太郎の詩集「智恵子抄」の話でも淡々と書こうかと思います。高村光太郎といえば詩人でありながら「乙女の像」や「手」でも有名な彫刻家ですね。特に「手」は中学・高校の美術の教科書で見た!という人もいるかもしれません。妻である高村智恵子も芸術家で、絵画や紙絵などを制作していました。有名なものは、平塚らいてうが主となって発行された女性のための雑誌「青鞜」の創刊号...